ジャズギターとアコギ、その違いとは?構造からサウンド、奏法までを比較と解説。

「ギターを始めたいけれど、ジャズギターとアコースティックギター(アコギ)って何が違うの?」
「見た目は少し似ているけど、音や弾き方はどう違うんだろう?」

そんな疑問をお持ちではありませんか?

結論から言うとジャズギターとアコギは全くの別物です。

というのもジャズギターは演奏するジャンルを差す言葉で、アコギはギターの種類を差している言葉だからです。

ですが、ジャズギターでよく使用されるアコギのようなギターがあります。
それはフルアコースティックギター(フルアコ)やセミアコースティックギター(セミアコ)と呼ばれるギターです。


フルアコ、セミアコとアコースティックギターは、どちらも「アコースティックな響きを持つギター」という点では共通していますが、その構造、サウンド、そして得意とする音楽ジャンルは大きく異なります。

この記事ではそれぞれの特徴を、構造、サウンド、演奏スタイルの3つの側面から徹底的に比較・解説します。
これから購入を検討されてる方はどちらのギターが自分のやりたい音楽に合っているのか、ぜひ見つけてみてください。

まず、最も分かりやすい見た目と、そこからくる構造の違いを見ていきましょう。

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(左フルアコ、右アコギ)

項目ジャズギター(フルアコ/セミアコ)アコースティックギター(アコギ)
ボディ形状アーチトップ、fホールフラットトップ、ラウンドホール
ボディの厚み厚め、薄め厚め
ピックアップハムバッカー(マグネティック)が主流ピエゾやマイク(エレアコの場合)
使用する弦フラットワウンド弦、ラウンドワウンド弦(エレキギター弦)ブロンズ/フォスファーブロンズ弦

ボディ構造

  • ジャズギター: 一般的に「フルアコースティックギター(フルアコ)」や「セミアコースティックギター(セミアコ)」を指します。
    最大の特徴は、ヴァイオリンのようにボディのトップとバックが曲線を描くアーチトップ構造と、ボディに空けられたfホールです。
    これは、アンプを通した際のサウンドをコントロールし、甘くメロウなトーンを生み出すための設計です。
    ボディの厚みはアコギに比べて薄いものが多くなっています。
  • アコギ: ボディのトップが平らなフラットトップ構造で、中央に大きな丸いサウンドホールが空いているのが一般的です。この構造により、弦の振動がボディ全体で豊かに共鳴し、パワフルで煌びやかな「生鳴り」を生み出します。

ピックアップ

  • ジャズギター: エレキギターと同じマグネティックピックアップ(特にノイズに強いハムバッカータイプ)が搭載されているのが基本です。
    アンプに接続して演奏することが前提となっており、ピックアップが弦の振動を電気信号に変えて音を出力します。
  • アコギ: 本来はピックアップを持たず、生音で演奏する楽器です。
    ライブなどで大きな音を出すためにピックアップを搭載したモデルは「エレクトリックアコースティックギター(エレアコ)」と呼ばれます。
    エレアコに搭載されるのは、弦の振動やボディの鳴りを直接拾うピエゾピックアップや、内部に小型マイクを仕込んだものが主流で、生音のニュアンスを再現することに重点が置かれています。

  • ジャズギター: 甘く、落ち着いたトーンを求めて、表面が滑らかなフラットワウンド弦が好んで使われます。
    フラットワウンド弦は伝統的なジャズトーンですが、よりアコースティック感とサスティーンを伸ばすためにラウンドワウンド弦を張るギタリストが最近は増えています。
  • ゲージ(弦の太さ)は太めのものが主流です。
  • アコギ: キラキラとした高音と豊かな倍音が特徴のブロンズ弦フォスファーブロンズ弦が一般的です。
    弦の表面は巻線がそのままのラウンドワウンドで、これがアコギらしい華やかなサウンドを生み出します。

サウンド(音色)の違い

構造の違いは、そのままサウンドの違いに直結します。

  • ジャズギターのサウンド: アンプを通すことを前提とした、甘く、暖かく、メロウなトーンが特徴です。
    サスティン(音の伸び)は比較的短く、一音一音の輪郭がはっきりとしています。特にコードを弾いた時のまとまりが良く、複雑なジャズのハーモニーを美しく響かせます。
  • アコギのサウンド: ボディの鳴りを最大限に活かした、明るく、煌びやかで、倍音豊かなサウンドが魅力です。
    サスティンも長く、開放感のある響きが特徴。力強いストロークから繊細なフィンガーピッキングまで、ダイナミクス豊かな表現が可能です。

演奏スタイルと得意な音楽ジャンル

それぞれのギターは、そのサウンド特性から得意とする演奏スタイルや音楽ジャンルも異なります。

フルアコ

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  • 主な演奏スタイル: テンションノートを多用した複雑なコードワーク、ベースラインとコードを同時に奏でるウォーキングベース、流れるような単音での即興演奏(インプロヴィゼーション)が中心となります。
  • 得意なジャンル: 名前の通りジャズが中心ですが、その甘いトーンからブルースフュージョン、さらには初期のロックンロールロカビリーでも愛用されてきました。

アコースティックギター

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  • 主な演奏スタイル: コードをかき鳴らすストローク奏法、伴奏やソロで使われるアルペジオ、指で弦を弾くフィンガーピッキングなど、非常に多彩な奏法が用いられます。
  • 得意なジャンル: フォークソングポップスの弾き語りはもちろん、カントリーブルーグラスロック、そして超絶技巧が光るソロギターまで、現代音楽のあらゆるシーンで活躍するオールラウンダーです。

まとめ

ジャズギターとアコギの違い、お分かりいただけたでしょうか。最後に、あなたがどちらを選ぶべきかのヒントをまとめます。

  • ジャズギターがおすすめな人
    • ジャズやブルース、ロカビリーといった音楽が好き
    • 甘く、大人っぽいギターサウンドに憧れる
    • バンドの中で、コードワークやソロで活躍したい
    • アンプに繋いで音作りを楽しみたい
  • アコギがおすすめな人
    • 弾き語りをしてみたい
    • フォークソングやJ-POP、ロックなど幅広いジャンルを演奏したい
    • ギター1本でどこでも気軽に音楽を楽しみたい
    • キラキラとしたコードストロークや、繊細なフィンガーピッキングに魅力を感じる

もちろん、これはあくまで一般的な傾向です。
アコギでジャズを演奏するギタリストもいれば、ジャズギターでポップスを奏でるアーティストもいます。

最終的には、あなたが「どんな音楽を」「どんな音で」奏でたいかが最も重要です。
ぜひ楽器店で実際に両方のギターを試奏してみて、そのサウンドと弾き心地を体感し、あなたの音楽の旅の最高のパートナーを見つけてください。